TEDDY MARKET

2026/05/21 19:16

ランジェリーの反乱
-miu miuのブルマルックに見るカウンターカルチャー-


2023年秋冬コレクションでmiu miu(PRADAと同デザイナーのセカンドブランド)が打ち出した、ブルマのようなショーツのルックは衝撃的だった。

完全に社会に対する”カウンターカルチャー”だと思った。


miu miu 2023-24 aw


miu miu 2023-24 aw

なぜこれが衝撃だったかって、このくらいの布面積のボトムウェアは、これまでセクシャルなものとして、男性の目を楽しませる用途とされてきたものを、パリコレクションというファッションの大舞台で「ノンセクシャルでファッショナブル、そして女性の自己表現のアイテムとして」その概念を180度覆したのだから。

またそのシルエットは日本においては特に、悪しき歴史としてフェミニズム史に刻まれている、ほんの20年ほど前まで女子学生の体育着として流通していた”ブルマ”のシルエットとそっくり。未成年である女児たちを「エロ」として消費していった象徴のひとつであった”ブルマ”と奇しくも似ているのだ。

その”ブルマ”の歴史を、miu miu がわたしたち女性が選び取るものとして取り返してくれた。


この流れは実はもっと前から世界にじわじわと浸透し始め、miu miu のブルマルックよりさらに数年前から、ブラジャーをアウトウェアにするスタイルなんかは流行してきている。日本でも”見せブラ”としてカジュアルに街中で見かけるようになった。

これこそ、女性の下着を”見られて消費される”モノから、”見せて価値を再生産する”モノに変えるまさに、消費されてきた女たちが「エロい下着」を「自分たちの下着」変えていくパワフルなカウンターになり得てる。

一方でインナーウェアとしてのランジェリーは近年ではより機能的で身体に心地よいものが主流となり始めているように思う。

その変化も、下着が「男性の目のための装置」から、「自分の身体と気分のための道具」に戻されてきているということじゃないかな。見せるランジェリーはより装飾的に、隠すランジェリーはより機能的に。

装飾と快適さという二方向に分かれた変化は、どちらも女性たちが自分たちを客体から主体に取り戻していく兆しみたいだ。すごく熱い展開。

話は戻ってブルマルックを発表したmiu miuのデザイナー、ミウッチャ・プラダは、女性の自立や社会を変える力としてファッションを長年牽引してきた人物である点から見ても、この世界の流れの中で、このスタイルを提案したことは、めちゃくちゃ納得感がある。

ミウッチャ・プラダはmiu miu のほかにPRADAのデザイナーも勤めるが(というよりもPRADAがあって、そのセカンドブランドとして後年miu miuが立ち上げられた)、PRADAではなくmiu miuでこのルックを発表したこともとても意味深い。

miu miu はPRADAよりも比較的手に取りやすい価格帯で10代〜20代と若年層をターゲットとしている。これからの世代を作る若い女の子たちに向けてブルマショーツというアイコニックなルックを使って、女性を客体に収めていたアイテムを、主体に取り戻すファッションアイテムとして再提案したのだ。社会を、変えていく目線を感じた。

miu miu というブランド名がミウッチャ・プラダの幼少期の愛称ミュウミュウから来ていることにも想いを馳せると少し目頭が熱くなる。

ファッションは、一方で印象操作やプロパガンダにも近くて、でも、ファッションのすごいところはそれがストリート、一般市民から起きるところである。めちゃくちゃ民主的な社会運動なのだ。

だから流行とはすごい。権威あるブランドが、ブルマーショーツを堂々たるファッションアイテムとして承認する。それがじわじわと流行になっていく。それらがユニクロで販売される頃にはすっかり、ブルマのようなランジェリー姿は、「エロ」として一方的に消費されるものではないと、潜在的に社会のムードが変化するだろう。

そしてそれはフェミニズムの講演会をやるよりも、ずっと速く、ずっと広く、気がついたら社会に伝番している。

こんなふうにファッションや流行は、暴力を使わずに、怒りで誰かを殴らずに、社会を変容させていく。



Writer : Hazuki SUEISHI 

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