2026/05/21 19:24
流行は、願いのかたちをしている
─トレンドカラーが映す社会のムード
ファッション誌ELLEデジタルマガジンで、「ハートフェルトピンク」が、今年2026年のトレンドカラーのひとつとして取り上げられている。
ELLEデジタルマガジンでは、ハートフェルトピンクを用いた柔らかくも明るいパワーを感じさせるスタイルが紹介されていた。このカラーは、一般社団法人 日本流行色協会(JAFCA)が、2026年のイメージカラーとして発表したものだ。
これから、このピンクは「トレンドカラー」として日本の市場で多く使われていく。きっと今年、わたしたちは、ショッピングに行く店頭で知らず知らずのうちにこのカラーを目にするはずだ。
現に、日本の大手セレクトショップやファッション企業が、既にこのカラーを使ったアイテムをどんどん発売し始めている。
じゃあ、わたしたちもこのトレンドカラーをファッションに取り入れば、お洒落になれるのか。今っぽいのか。どうだろう?
流行のひとつの大きなトピックであるトレンドカラー。「今年はこのカラーがホット!」「おしゃれになりたいならこの色を取り入れて!」などと、雑誌やSNS、インフルエンサーが、そこかしこで発信しているけれど、流行とは、トレンドカラーとは、どこからやってくるのだろうか。なぜこのピンクが、いま、わたしたちのファッションに取り入れるべきだと、わたしたちは思わされるのか。
トレンドカラーは、時代のムードだ。実は世界情勢やわたしたちを取り巻く社会問題、ひいては政治。そういったものと密接に関係している。
このカラーを選んだ、一般社団法人 日本流行色協会(JAFCA)は、選定理由をこのように発表している。
生活不安が長期化している今、安心・安全を求め、余計な刺激を避ける心理から、安定感のあるベーシックカラーや癒し感のある淡い色が好まれています。一方で、2025年に開催された大阪・関西万博や日本初の女性首相の誕生は、小さな動きの芽として停滞ムードに変化をもたらしました。それをきっかけに、2026年は人々の気持ちが「静」から「動」へ移行する1年となりそうです。
また、ほとんどの物事がスマートフォンを通した疑似体験で完結するようになり、実際の体験が特別なことになってきました。身体を動かし、そこで出会った人と直接コミュニケーションをとり、感情に刺激を受けるという「動」的な要素が心身の充足に寄与するのではと改めて実体験の価値が見直されています。
このような心の活性化や身体性への意識から、2026年は動きをイメージさせる暖色が注目されます。中でもピンクは、活力・意欲という動的なイメージと、幸せ・寛容といった柔らかなイメージをバランスよく併せ持つ色。変化を受け入れる心を優しく後押しし、明るく幸せな気持ちで心を満たしてくれる明るいピンク「ハートフェルトピンク」を2026年の色―メッセージカラーとして選定しました。
蔓延する不安感、政治の変動、わたしたちを取り巻く環境、そういったものの中で、2026年をポジティブな空気にしていく願いが込められている。
そんな願いのカラーを、わたしたちが流行として身に纏ったら。電車で、カフェで、街中で、このハートフェルトピンクをたくさん目にするようになったら─。色には心理的な作用があるとも研究されている。目に入る色で、社会の雰囲気は変わりそうだ。
他にも「トレンド」とされるカラーは、例えばコレクションに多くみられる色であったり、世界の機関が発表したカラーであったり、いくつか散見されるけれど、その多くには、世の中の情勢や社会への無意識の願いが込められている。
トレンドは、単なる流行り廃りみたいな軽薄なものではないのだ。一般社団法人 日本流行色協会(JAFCA)が今年の色を発表するように、トレンドを創るという行為は、社会のムードを創ろうとする試みでもある。
「流行に乗りたくない」と一蹴するのは簡単だけど、それってちょっとダサい。流行が、何を映しているのか、そして今の社会にどんなメッセージを訴えかけているのか。
わたしは、流行が何を映しているのかを考えたい。それは、単に洋服を選ぶことでもあるけれど、同時に、今の社会とどう生きるかを選ぶことでもあるから。
Writer : Hazuki SUEISHI
TEDDY MARKET
